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社会福祉法人の会計基準 HPセミナー 総論編 第1回
平成23年7月に厚生労働省より発表されました「社会福祉法人の会計基準」(以下「会計基準」と言います。)について、実務者のためになるポイントを紹介させていただきたいと思います。
●会計ルールの統一
今までは、社会福祉法人であってもその事業内容によって、「社会福祉法人会計基準」(以下「旧会計基準」と言います。)「指導指針」「病院会計準則」「企業会計原則」等様々な会計ルールが認められていました。
さらに、「授産施設会計基準」「就労支援会計処理基準」もあり混乱していました。
⇒「会計基準」は、会計ルールを統一することになりました。
統一したことにより、簡素化されたわけですが、逆に勘定科目は増えてしまいました。
なお、「旧会計基準」をベースにしていますが、「指導指針」の考え方が、色濃く反映していると感じます。
●適用範囲(全事業)の一元化
今までは、「社会福祉事業」「公益事業」「収益事業」(「会計基準」では、「事業区分」と言います。)を全くバラバラに考え、それぞれの会計ルールでそれぞれの計算書類を作成することが認められていました。
⇒「会計基準」は、法人全体を把握できるように、その三つを合算した法人全体の財務諸表を作成することになりました。
現行の事業ごとの計算書類を合計した総括表がついたようなイメージです。
「収益事業」で勘定科目が異なっていたような場合は、統一することが必要になります。
なお、お気づきになったと思いますが、計算書類という言葉も財務諸表に変わりました。
●区分方法の変更
「旧会計基準」では「経理区分」、「指導指針」では「会計単位」「セグメント」という区分方法でした。
⇒「会計基準」は、「事業区分」の下に「拠点区分」「サービス区分」を設けることになりました。
「拠点区分」は、一体として運営されている施設や事業所です。
「サービス区分」は、個々のサービスを言います。
「旧会計基準」においては「経理区分」だけですが、会計基準ではこれは主に「サービス区分」に対応します。そして、その上に施設や事業所ごとまとめる「拠点区分」が設けられました。
「指導指針」においては「会計区分」⇒「拠点区分」、「セグメント」⇒「サービス区分」であり、基本的に変更はないことになります。
●財務諸表について
前にも記載しましたが、「計算書類」から「財務諸表」に呼び方が変わりました。
会計的な見地から見て、一般的な呼び方になったと思います。
【資金収支計算書】
1.収入・支出に表現を統一
「収入」「支出」は、資金の増減を表す場合のみになりました。
2.区分の変更
@経常活動による収支 ⇒ @事業活動による収支
A施設整備等による収支 ⇒ A施設整備等による収支
B財務活動による収支 ⇒ Bその他の活動による収支
「旧会計基準」では、あいまいな点がありましたが、「会計基準」では、@Aの内容が限定され、Bをその他の活動にすることになりました。
主な変更として、「設備資金借入金収入」「償還支出」が、財務活動による収支から施設整備等による収支に変わった点が挙げられます。
【事業活動計算書】
1.収益・費用に表現を統一
「収入」「支出」は資金増減のみに限定し、事業活動側は、「収益」「費用」に統一しました。
なお、補助金や運営費等といった収益にふさわしくない科目については違和感がありますが、割り切ってください。
2.名称の変更
「事業活動収支計算書」 ⇒ 「事業活動計算書」
「収入・支出は資金取引の表現」との考え方を受けて「収支」の言葉が削除されました。
3.区分の変更
@事業活動収支の部 ⇒ @サービス活動増減の部
A事業活動外収支の部 ⇒ Aサービス活動外増減の部
B特別収支の部 ⇒ B特別増減の部
基本的に内容は変わっていません。
主な変更として、「○○区分間繰入金収入・支出」が、事業活動収支の部から特別増減の部に変わった点が挙げられます。
●附属明細書、注記の充実
【附属明細書】
今までは、採用している会計ルールごとに様々な別表や明細表の作成が求められました。
⇒「会計基準」は、これらの書類が共通フォームの「明細書」に統一されました。
但し、就労支援事業や授産事業においては、追加の「明細書」が残りました。
【注記】
今までは、計算書類の基本的な最低限(7項目)の限られた注記でした。
⇒「会計基準」は、より正確に理解できるように15項目に倍増されました。
また、法人全体だけでなく拠点区分でも記載が必要になりました。
毎年度複雑な作業がいる項目はないと思われますが、初年度はそれなりの準備が必要でしょう。
●印象
会計ルールが統一され、財務諸表の構成等は、合理的になったと思います。
しかし、統一したことにより勘定科目はさらに膨大な量になり、”簡素化”とは逆行してしまいました。この点は思い切って勘定科目を減らす方向に努力の余地があったと思います。
また、附属明細書、注記の充実は、実務者サイドからすれば開示情報としてそこまでいるのかといった印象を持つのではないでしょうか。
第2回、第3回は、財務諸表を中心にその内容について、もう少し突っ込んで紹介します。
さらに、第4回、第5回はリース会計等の新しい会計手法について紹介の予定です。