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社会福祉法人の会計基準 HPセミナー 総論編 第2回
第1回は、概要を説明しました。今回と次回にわたって、もうちょっと理解を含めたいと思います。
●内部取引の消去
法人内においては、他の経理区分との間で、貸したり借りたりの債権債務、資金等をあげてしまうもらってしまうといった収入支出や資産の売買などの取引(これらを「内部取引」と言います。)が発生するケースがあります。
「旧会計基準」においては、他の科目と同じように残したまま計算書類に表示していました。
法人全体で見ると、資産負債や収入支出が膨らんだ状態の計算書類になっていたわけです。
「会計基準」では、正味金額を公表した方がいいと考え、従来通り仕訳は実施しますが、財務諸表の表示は相殺して消去することになりました。
但し、見えなくなった内部取引を表すために、詳細な附属明細書の作成が求められています。
【例】 「A拠点」が「B拠点」に対して運転資金1,000,000円を貸し付け、決算時にまだ精算されていないような場合次の様になります。
【貸借対照表】 | ||||
A拠点区分 貸借対照表 | B拠点区分 貸借対照表 | |||
拠点区分間貸付金 1,000,000円 |
拠点区分間借入金 1,000,000円 |
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〈相殺消去〉 | ||||
合算の貸借対照表 | ||||
相殺消去されて表示されない | ||||
【附属明細書】 | ||||
事業区分間及び拠点区分間 貸付金(借入金)残高明細書 |
「旧会計基準」では、本来一致するべき貸付金と借入金が不一致のまま計算書類を作成しているケースがありました。例えば、支出した方は、返してもらうつもりで「貸付金」で処理したのに、収入した方は、もらったとして「○○収入」で処理したまま決算を確定してしまったような場合がそうなってしまいます。
しかし、「会計基準」では、このような仕訳のアンバランスによって本来一致すべき金額が異なった場合消去できなくなります。
したがって、各区分間において対応する勘定科目の金額の一致の確認が不可欠になってきます。
特に施設や担当者が異なっている場合は、日々のお互いのコミュニケーションが重要です。
●勘定科目のアレンジ
いろいろな事業の会計ルールを統一化したことにより、特に各事業収入の勘定科目が増えました。
しかし、必要のない大区分の科目は、省略できますから実際の財務諸表において収入の部に関しては、様形よりはすっきりすると思います。
なお、ほとんどの大区分の追加・修正はできません。
中区分、小区分の省略や追加は、限定的に可能です。
一部の小区分の下に補助科目を作ることもできます。
●資金収支計算書及び事業活動計算書 共通の事項
1.社会福祉法人が実施するすべてに事業について、大区分レベルで○○事業収入(収益)が設定されました。(前項記載のように、必要のない場合は、省略できます。)
その大区分の中に介護料、措置費、運営費、自立支援給付費、補助金等の性格別の収入を中区分で記載することになりました。
2.支出(費用)の部の「事務費」「事業費」の順番が、「事業費」「事務費」の順番に変わりました。
なお、水道光熱費、燃料費、賃借料については、概ね事業に係るものとみなし、事業費のみに計上できます。
●資金収支計算書 に関する事項
1.第1回で記載しましたが、3区分の資金収支の部の名称が変わりました。(それに伴いその内容も変わっています。)
ここで3区分は、支払資金の増減状況についてその発生原因の性格によって分類されています。
2.3区分の内容変更に伴い、その位置が移動した勘定科目として、次のようなものがあります。
繰入金収入・支出 @経常活動 ⇒ Bその他の活動
設備資金借入金収入・支出 B財務活動 ⇒ A施設整備等
3.追加された勘定科目として、次のようなものがあります。
有価証券評価益・・・・・・・・・・・・・・・・・・・含み益のある有価証券を時価評価した場合に使います。
法人税、住民税及び事業税支出・・・・・・収益事業を実施していて納税額がある場合のみ使います。
○○区分間繰入金収入、支出・・・・・・・・事業区分、拠点区分等に分けられました。
リース債務の返済支出・・・・・・・・・・・・・・リース会計においてリース料支払時に使います。
●事業活動計算書 に関する事項
1.第1回で記載しましたが、3区分の事業活動の名称が変わりました。(それに伴いその内容も変わっています。)
ここで3区分は、事業活動に対する係わりの度合いによって分類されています。
2.3区分の内容変更に伴い、その位置が移動した勘定科目として、次のようなものがあります。
繰入金収入・支出 @事業活動外収支 ⇒ B特別増減
3.追加された勘定科目として、次のようなものがあります。
固定資産受贈額・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・現物寄付があった場合に使います。
災害損失・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・火災、地震等による固定資産の損失の場合に使います。
○○区分間繰入金収益、費用・・・・・・・・・事業区分、拠点区分等に分けられました。
○○区分間固定資産移管収益、費用・・・事業区分、拠点区分等間で固定資産が移動した場合に使います。
法人税、住民税及び事業税・・・・・・・・・・・収益事業を実施していて納税額がある場合のみ使います。
法人税等調整額・・・・・・・・・・・・・・・・・・・税効果会計を採用している場合のみ使います。
4.削除された勘定科目として、次のようなものがあります。
退職給与引当金繰入・・・・・・・・・・・・・・・「退職給付費用」で処理することになりました。
○○引当金戻入・・・・・・・・・・・・・・・・・・・対象科目との差額のみ費用計上するため不要になりました。
5.その他
通常の「国庫補助金等特別積立金取崩額」は収入から、費用のマイナスに移動しました。
「旧会計基準」では「事業活動収入」に記載していましたが、「会計基準」では、「減価償却費」を補うものであることからその控除項目すなわち費用のマイナスと考え「減価償却費」の次に記載することとされました。
次回は、貸借対照表、注記、附属明細書について説明します。