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社会福祉法人の会計基準 HPセミナー 総論編 第3回

第2回に引き続き、主な変更点等について説明します。

●貸借対照表

今までは、事業(社会福祉事業、公益事業、収益事業)ごとに作成すればよく、その内訳的な経理区分ごとの作成は任意でした。
事業ごとの貸借対照表は、その内容によって採用している会計基準が異なる場合があり合算できないので、法人の全体像がわかりませんでした。(独自にExcelで総括表を作成している法人もありましたが・・・)
「会計基準」では、上と下に作成範囲を広げて法人全体、事業区分別、拠点区分別が必要となりました。

様式は、基本的に変わっていませんが、勘定科目が増えています。
リース資産、繰延税金資産等見慣れない科目が用意されていますが、それらについては第4回以降で紹介します。
ここではそれ以外の変更追加点について説明します。

1.基本金

第1号基本金:「旧会計基準」では除外していた10万円未満の初度調度備品についても計上することができるようになりました。
第4号基本金:廃止されました。移行年度に全額取り崩します。

2.国庫補助金等特別積立金

〈整備時分〉 : 従来計上分です。
「旧会計基準」では除外していた10万円未満の初度調度備品についても計上することができるようになりました。(「指導指針」に合わせた取扱いです。)
〈償還補助分〉
「旧会計基準」では含まれていなかった施設設備整備借入金の償還補助金も対象となりました。
実質的に施設整備補助であることから、追加されたものです。(「指導指針」に合わせた取扱いです。)

3.その他の引当金

徴収不能引当金、賞与引当金、退職給付引当金に限定され、その他の引当金は、積立金の性格が強いため廃止されました。
したがって、上記以外の引当金例えば修繕引当金の残高がある場合、移行年度に全額取り崩しその後の引当金の計上はできません。

4.ワンイヤールール

第4回で紹介します。

●附属明細書

今までは、各基準によって様々な明細表の作成が求められていました。

「会計基準」では、共通フォームに統一整理され、「財務諸表」を補完する重要な情報と位置づけられ大幅に拡充されました。

「会計基準」第6章に列挙された拠点区分別の明細書が4種類、その他の重要な事項として運用指針Tに法人全体の明細書が7種類、拠点区分ごとの明細書が3種類、就労支援事業に係る明細書が8種類、授産事業に係る明細書が1種類の合計16種類(!)が規定されています。

さらに附属明細書ではありませんが、固定資産管理台帳も従来通り規定されています。
このように就労、授産を除いたとしても、10種類もあります。

内容的には「旧会計基準」をベースにしたものがほとんどですから、それに関してはそれほど困難になることはないと思われます。
○○区分間の取引(資金移動や債権債務)については詳細に定められていますから、「内部取引」の項にも記載したとおり施設間または担当者間の取引の確認が重要です。

●注記

今までは、あまり重視されていなかったように思いますが、「会計基準」では、附属明細書と同様「財務諸表」を補完する重要な情報と位置づけられ大幅に拡充されました。
法人全体の財務諸表と拠点区分の財務諸表に記載が必要となります。

新たに加わった注記事項で注目するもの

1.継続事業の前提に関する注記

事業を継続することが極めて困難になりそうなときに、その状況、内容、改善案等を記載します。
例えば、次のような状況の場合対象となります。
・収支(資金も事業活動も)が経常的に極端に悪化
・債務超過
・借入金の返済不能
・巨額損害賠償金の発生
・法令違反等による著しい信用の喪失

2.関連当事者との取引内容

関連当事者とは、「役員とその近親者及びそれらの者がコントロールできる法人」を言います。
役員等の氏名、職業及び法人の名称、住所、資産総額、事業内容、議決権割合等 並びに 法人との関係を記載します。
取引については、その内容、金額、取引条件、債権債務残高等を記載します。
法人取引の透明化を目的としています。

全体として、ちょっと詳細すぎるかなあとも思いますし、社会福祉法人ではあまり出ないと思われる項目については「省略可能」の範囲ももっと広げてもよかったと思います。

●最後に

主な変更点を簡潔に記載しようと思いましたが、結構なボリュームになってしまいました。
紹介しきれなかった内容については、別途機会を設けたいと思います。

次回と最終回は、導入予定の新しい会計手法について説明します。