第4章 資本的支出と修繕費
(1)区別が必要な訳
施設や設備に対する支出であっても、資本的支出(固定資産)とするか修繕費とするかでは、減価償却によってその支出額を費用配分するかまたは一括処理するかという点が大きく異なりますので、その区別が重要になります。
ご承知のことでしょうが、財務諸表に与える影響は下図のとおりです。
【支出年度】
資本的支出 | 修繕費 | |
<資金収支計算書> | 施設整備等による収支 固定資産取得支出 |
事業活動による収支 修繕費支出 |
<事業活動計算書> |
サービス活動増減の部 減価償却費 |
サービス活動増減の部 修繕費 |
<貸借対照表> | 固定資産の部 | 計上されない |
【次年度以降】
資本的支出 | 修繕費 | |
<資金収支計算書> | 計上されない | 計上されない |
<事業活動計算書> |
サービス活動増減の部 減価償却費 |
計上されない |
<貸借対照表> | 固定資産の部 | 計上されない |
(2)判定のガイドライン
資本的支出:性能向上、改良、使用可能期間延長等固定資産の価値を高める支出です。
修繕費:通常の維持管理、本来の機能を回復するための支出です。
実質的に判断するのですが、一般例を以下に示します。
【資本的支出】
・避難階段を取り付けるなど物理的造作を付け加えた
・倉庫から教室に用途変更のため改装した
・砂利をアスファルト舗装に変更した
・耐震工事をした
【修繕費】
・雨漏りがするので同様の材料で屋根を直した
・倉庫を移築した
・遊具の塗装を塗り替えた
・浸水によりいたんだカーペットを全て交換した
補助金の交付を受ける場合には、その交付要綱等に従うことになります。
それでも判断できないような場合、法人税法の規定による区分判定が参考になります。
税金に関する本においてよくある図ですが、図−1 をご覧ください。
図−1 | ||||
一つの修理・改良に要した費用 | ||||
↓ | ||||
修 繕 費 |
YES ← |
20万円未満か? | 資 本 的 支 出 |
|
↓NO | ||||
YES ← |
周期の短い費用(おおむね3年)か? | |||
↓NO | ||||
明らかに資本的支出の部分か? | YES → |
|||
↓NO | ||||
YES ← |
明らかに修繕費の部分か? | |||
↓NO | ||||
YES ← |
60万円未満か? | |||
↓NO | ||||
YES ← |
前期末取得価額の10%相当額以下か? | |||
↓NO | ||||
YES ← |
(Cの金額)継続して7・3基準により経理しているか?(Dの金額) | YES → |
||
↓NO | ||||
NO ← |
〈実質的判定〉資本的支出か? | YES → |
A | 支出金額×30% |
B | 支出金額−A |
C | A又はEのうち少ない金額 |
D | 支出金額−C |
E | 前期末取得価額×10% |
※ 詳細は法人税法基本通達をご覧ください。
こちら
Q4.5.1.5 「修繕費」と固定資産の取得の区別のルールを教えてください。
Q4.5.1.6 屋根の防水工事を行いました。「修繕費」でよいですか?
Q4.5.1.8 砂地だった駐車場をアスファルト敷きにして駐車区分のラインを引きました。修繕費として計上してもよいですか?
Q4.5.1.9 建物の耐震診断を行い、その結果建物一部を建て替えることとなりました。耐震診断の費用は建物勘定に含めてもいいでしょうか?
もご覧ください。
(3)その他
@資本的支出の減価償却の方法、耐用年数
その資本的支出のもととなる償却資産と同じ償却方法・耐用年数を使用し、別の資産として管理します。
その結果、実質一体となって使用しているのに、減価償却費はそれぞれ計上され、その価値がゼロになる時期が前後することになります。
A賃借している建物の改修工事
もととなる償却資産が、自己所有または賃借に係わらず同様の判断をしてください。