社会福祉法人会計基準 Q&A (会計実践編)

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4.1.7  引当金について

 

Q4.1.7.1 引当金が3つに限定されたのはなぜですか?
Q4.1.7.2 引当金の処理は、洗替法と差額法のいずれを採用すればいいでしょうか?
Q4.1.7.3 「徴収不能引当金」の考え方と処理方法を教えてください。
Q4.1.7.4 徴収不能引当金の対象となる債権(一般債権)に未収補助金は含まれますか?
Q4.1.7.5 「徴収不能引当金」があり、その金額以下の徴収不能が起きた場合は、どんな処理が必要ですか。
Q4.1.7.6 必ず賞与引当金を計上しなければいけませんか?
Q4.1.7.7 賞与引当金戻入の科目がありませんが、どう処理すべきでしょうか?
Q4.1.7.8 退職給付引当金繰入額は、退職給付費用で処理すればいいでしょうか?
Q4.1.7.9 修繕引当金の計上は、認められませんか?
Q4.1.7.10 新基準の貸借対照表には、引当金は賞与・退職給付・徴収不能の3つしか見あたりません。
当法人ではこれまで人件費引当金が計上されています。これまで通り、当該科目で処理していいですか?


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4.1.7.1  引当金が3つに限定されたのはなぜですか?

  旧基準では、条件に当てはまれば引当金の計上を認めていました。

しかし、中にはその発生の可能性が低いケースや金額的にあいまいなものも処理されていました。これらは、本来積立金で処理すべきものです。

そこで、新基準では明確にするために「徴収不能引当金」「賞与引当金」「退職給付引当金」の3つに限定しました。

それ以外の○○引当金についてもし継続したいのであれば、○○積立金として純資産に計上することになります。


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4.1.7.2  引当金の処理は、洗替法と差額法のいずれを採用すればいいでしょうか?

  新基準における内容から判断すると、差額法を想定しているようですが、単純でわかりやすいので洗替法を推奨します。
なお、仕訳が異なるだけで、財務諸表の表示の段階では同じになります。

Q4.1.7.2.1 引当金の繰入、戻入について洗替法を教えてください。
Q4.1.7.2.2 引当金の繰入、戻入について差額法を教えてください。


[QAS-20006]   Q&A目次   ページTOP ページTOP

4.1.7.2.1  引当金の繰入、戻入について洗替法を教えてください。

  前年度末に繰り入れた金額のうち残っている残高を全額戻入れます。当年度末には、新たに全額を繰り入れます。この方法を洗替法と言います。

【仕訳例】決算において「徴収不能引当金」35,000円を計上する。なお、現在の残高は、30,000円である。

借 方 貸 方 摘 要
徴収不能引当金 30,000 徴収不能引当金戻入益 30,000 徴収不能引当金戻入

借 方 貸 方 摘 要
徴収不能引当金繰入 35,000 徴収不能引当金 35,000 徴収不能見込み額計上


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4.1.7.2.2  引当金の繰入、戻入について差額法を教えてください。

  当年度末には、残高はそのままにして必要額になるまで追加で繰り入れます。この方法を、差額法と言います。

【仕訳例】決算において「徴収不能引当金」35,000円を計上する。なお、現在の残高は、30,000円である。

借 方 貸 方 摘 要
徴収不能引当金繰入 5,000 徴収不能引当金 5,000 徴収不能引当金差額繰入


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4.1.7.3  「徴収不能引当金」の考え方と処理方法を教えてください。

  未収金などの計上額のうち回収することが出来ないであろう額を見積もった金額を計上します。実際の処理方法は以下となります。

【仕訳例】「事業未収金」50,000円が、回収できない見込みなので、決算において「徴収不能引当金」を計上する。

借 方 貸 方 摘 要
徴収不能引当金繰入 50,000 徴収不能引当金 50,000 徴収不能見込み額計上



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4.1.7.4  徴収不能引当金の対象となる債権(一般債権)に未収補助金は含まれますか?

  未収補助金の徴収不能はあり得ませんから、徴収不能引当金の対象となる債権からは除いてください。


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4.1.7.5  「徴収不能引当金」があり、その金額以下の徴収不能が起きた場合は、どんな処理が必要ですか。

  資産計上されている「事業未収金」の内、徴収不能分を「徴収不能額」として処理するとともに徴収不能引当金を同額戻し入れします。

【仕訳例】
借 方 貸 方 摘 要
徴収不能額 3,000 事業未収金 3,000  


借 方 貸 方 摘 要
徴収不能引当金 3,000 徴収不能引当金戻入益 3,000  




Q4.1.7.5.1 徴収不能が起きましたが、「徴収不能引当金」は計上していません。どのような仕訳になりますか


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4.1.7.5.1  徴収不能が起きましたが、「徴収不能引当金」は計上していません。どのような仕訳になりますか

  資産計上されている「事業未収金」の内、徴収不能分を「徴収不能額」として処理します。

【仕訳例】
借 方 貸 方 摘 要
徴収不能額 3,000 事業未収金 3,000  




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4.1.7.6  必ず賞与引当金を計上しなければいけませんか?

  金額的な未確定要素も多く、毎年度引き当てる場合ズレズレで損益に大きな影響はないでしょうから、必ずしも引当なくてもよいと思います。


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4.1.7.7  賞与引当金戻入の科目がありませんが、どう処理すべきでしょうか?

  旧基準では、「賞与引当金戻入」の科目がありましたが、新基準ではなくなってしまいました。
貸方「賞与引当金繰入」で処理してください。

●洗替法の場合          洗替法については、
こちらをご覧ください。

【仕訳例】決算において、前年度の賞与引当金1,000を戻入れ、当年度の賞与引当金1,100を繰り入れる。

借 方 貸 方 摘 要
賞与引当金 1,000 賞与引当金繰入 1,000 賞与引当金戻入

借 方 貸 方 摘 要
賞与引当金繰入 1,100 賞与引当金 1,100 賞与引当金繰入



●差額法の場合          差額法については、こちらをご覧ください。

【仕訳例】決算において、前年度の賞与引当金残高が1,000あり、当年度の賞与引当金必要額1,100になるように差額100を繰り入れる。

借 方 貸 方 摘 要
賞与引当金繰入 100 賞与引当金 100 賞与引当金不足差額繰入


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4.1.7.8  退職給付引当金繰入額は、退職給付費用で処理すればいいでしょうか?

  その通りで結構です。

「退職給付費用」は、退職金支出そのものであったり、この退職給付引当金繰入であったり、退職給付引当資産の差損益であったり様々な性格のものが混在することになりました。

わかりにくくなったと考えるより、退職に関係する費用はすべて同じ性格としてまとめたと割り切ってください。


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4.1.7.9  修繕引当金の計上は、認められませんか?

  新基準では、こちらにあるように、3つの引当金に限定されましたので「修繕引当金」は認められません。

従って、旧基準で引き当てた「修繕引当金」を今後も引き当てたいような場合は、「修繕積立金」として積み立てることになります。

同時に、同額の「修繕積立資産」を積み立てることも忘れないでください。


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4.1.7.10  新基準の貸借対照表には、引当金は賞与・退職給付・徴収不能の3つしか見あたりません。
当法人ではこれまで人件費引当金が計上されています。これまで通り、当該科目で処理していいですか?

  新基準において、引当金は「徴収不能引当金」「賞与引当金」「退職給付引当金」に限定され、その他は廃止されました。

「人件費引当金」は、「人件費積立金」にすることができます。
積立金の場合、見合いの積立資産が必要になります。

移行を行うときに、人件費積立資産と人件費積立金科目を設定し処理してください。


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