社会福祉法人会計基準 Q&A (会計実践編)

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5.5  退職給付会計

 

Q5.5.1 「退職給付会計」について調べようとしたら、本一冊にもなっていました。
勉強して処理することになるのでしょうか?
Q5.5.2 加入している退職金制度が変わらなくでも、新基準では「退職給付会計」に従うと仕訳が変わってしまうのでしょうか?
Q5.5.3 退職給与から退職給付に言い方が変わっていますが、どう変わったのでしょうか?
Q5.5.4 決算における「退職給付引当資産」残高は、必ずしもそれまでに支払った額にはならないと聞きましたが、本当ですか?
Q5.5.5 「退職給付引当資産」は、期末要支給額で計上し、「退職給付引当金」は、掛金累計額で計上するとルール化してもいいですか?
Q5.5.6 今まで「退職共済掛金」で支払年度に処理していた退職金制度で、正しくは「退職給付引当資産」「退職給付引当金」に計上すべきものがありました。
どうしたらいいでしょうか?
Q5.5.7 退職給付制度の注記について教えてください。
Q5.5.8 退職金に関する資産負債がある場合、退職金を支給するときの仕訳例を教えてください。
Q5.5.9 同一法人内で職員の部署が変わっただけでも、仕訳が必要ですか?
Q5.5.10 「退職給付引当資産」の増減は、通常資金収支に影響がありますが、「退職給付引当金」の増減は、資金収支と無関係です。
これらの科目を混ぜて、仕訳してもいいですか?
Q5.5.11 退職共済掛金の処理について


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5.5.1  「退職給付会計」について調べようとしたら、本一冊にもなっていました。
勉強して処理することになるのでしょうか?

  いわゆる企業会計の「退職給付会計」は、その制度の複雑さからかなりのボリュームがあります。

しかし、社会福祉法人にとってほとんどの項目は必要ないと思われますから、特に勉強する必要はありません。


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5.5.2  加入している退職金制度が変わらなくでも、新基準では「退職給付会計」に従うと仕訳が変わってしまうのでしょうか?

  勘定科目名が若干変わりました。

それと、資産計上額、負債計上額の算定方法(下記参照)の選択肢が増えましたので法人がルールを変えた場合には金額が変わります。

基本的な考え方は、変わっていませんので安心してください。

(算定方法)・・・いずれかを採用します。

@退職給付引当資産、退職給付引当金:掛金累計額・・・同額計上
A退職給付引当資産、退職給付引当金:退職給付金の期末要支給額・・・同額計上
B退職給付引当資産:掛金累計額  退職給付引当金:退職給付金の期末要支給額・・・異なる金額


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5.5.3  退職給与から退職給付に言い方が変わっていますが、どう変わったのでしょうか?

  会計的な表現が変わっただけで、実質的に中身は同じと考えてください。

【科目名称の変更】
      
 旧基準      新基準 
 退職共済預け金   →   退職給付引当資産 
 退職給与引当金   →   退職給付引当金 
  


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5.5.4  決算における「退職給付引当資産」残高は、必ずしもそれまでに支払った額にはならないと聞きましたが、本当ですか?

  2つ理由が考えられます。

1つ目は、従来からあった要因ですが、3月分の掛金が未払いで、その仕訳がされていないような場合には差が生じます。

2つ目は、新基準のルール上の問題で生じるケースです。
旧基準の「退職共済預け金」は、実際支払った金額(=掛金累計額)で計上していましたが、新基準の「退職給付引当資産」は掛金累計額ではなく、決算において退職給付金の期末要支給額に合わせる処理も認められました。その場合には、必ずしも「退職給付引当資産」残高は、支払った額にならないことになります。


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5.5.5  「退職給付引当資産」は、期末要支給額で計上し、「退職給付引当金」は、掛金累計額で計上するとルール化してもいいですか?

  「退職給付引当資産」は、掛金累計額で計上するのが通常ですし、「退職給付引当金」は、期末要支給額での計上が多くみられます。

新基準では、資産負債を同額にするためいずれかに合わせることは、認められています。

しかし、ご質問のようにイレギュラーにそれぞれ逆を採用するようなルール(資産を期末要支給額で負債は掛金累計額)は不合理ですから認められません。


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5.5.6  今まで「退職共済掛金」で支払年度に処理していた退職金制度で、正しくは「退職給付引当資産」「退職給付引当金」に計上すべきものがありました。
どうしたらいいでしょうか?

  「退職給付引当資産」「退職給付引当金」とも処理年度に一括で計上することになります。

金額的には、大きいケースもあるでしょうが、同額計上であれば、次期繰越活動増減差額に影響を及ぼしませんし、資金にも無関係ですからので、処理しやすいと思われます。


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5.5.7  退職給付制度の注記について教えてください。

  2.(「拠点区分用」では、1.)重要な会計方針(3)引当金の計上基準

4.(「拠点区分用」では、3.)法人で採用する退職給付制度

に記載します。


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5.5.8  退職金に関する資産負債がある場合、退職金を支給するときの仕訳例を教えてください。

  「退職給付引当資産」と「退職給付引当金」を分けて仕訳する方が分かりやすいです。

【仕訳例】職員が退職し500,000円が本人に直接支払われた。「退職給付引当資産」及び「退職給付引当金」の残高は、500,000円である。

借 方 貸 方 摘 要
退職給付費用 500,000 退職給付引当資産 500,000 ○○退職

借 方 貸 方 摘 要
退職給付引当金 500,000 退職給付費用 500,000

Q5.5.8.1 退職給付引当資産より多く支払われた場合の仕訳を教えてください。
Q5.5.8.2 退職給付引当資産より少なく支払われた場合の仕訳を教えてください。


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5.5.8.1  退職給付引当資産より多く支払われた場合の仕訳を教えてください。

   Q5.5.8 退職金に関する資産負債がある場合、退職金を支給するときの仕訳例を教えてください。のケースで、差益が10,000円あり退職金が510,000円支払われた場合、以下の仕訳を追加します。
借 方 貸 方 摘 要
退職給付費用 10,000 その他の収益 10,000 退職給付引当資産の差益


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5.5.8.2  退職給付引当資産より少なく支払われた場合の仕訳を教えてください。

   Q5.5.8 退職金に関する資産負債がある場合、退職金を支給するときの仕訳例を教えてください。のケースで、差損が20,000円あり退職金が480,000円支払われた場合、以下の仕訳を追加します。
借 方 貸 方 摘 要
その他の費用 20,000 その他の収益 20,000 退職給付引当資産の差損


[QAS-20008]   Q&A目次   ページTOP ページTOP

5.5.9  同一法人内で職員の部署が変わっただけでも、仕訳が必要ですか?

  同一法人内であっても、拠点区分またはサービス区分で「退職給付引当資産」「退職給付引当金」を管理している場合は、移管の処理が必要になります。

拠点区分間で職員の異動があった場合の仕訳例を示します。

【移管元:A拠点】
借 方 貸 方 摘 要
退職給付引当金 1,000,000 退職給付引当資産


【移管先:B拠点】
借 方 貸 方 摘 要
退職給付引当資産 1,000,000 退職給付引当金


なお、同額でない場合は、拠点区分間固定資産移管費用、拠点区分間固定資産移管収益  が発生します。


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5.5.10  「退職給付引当資産」の増減は、通常資金収支に影響がありますが、「退職給付引当金」の増減は、資金収支と無関係です。
これらの科目を混ぜて、仕訳してもいいですか?

  職員の移動や決算における修正等のような資金の増減を伴わない場合においては、一つの仕訳でよいでしょう。

しかし、退職金支給時のように資金に関係する場合には、「退職給付引当資産」と「退職給付引当金」はその性格が異なりますので、それぞれに分けて仕訳をした方がよいでしょう。


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5.5.11  退職共済掛金の処理について

  人件費−退職給付費用?

Q5.5.11.1 県の退職共済会に加入しています。本人負担分は給料から天引きし、預り金として処理をしています。
掛金を支払った時の処理を教えてください。
Q5.5.11.2 職員を新たに採用しましたが、この職員は前の職場で当法人が加入している退職共済会に入っており、そのまま引き継いでいます。
当法人での処理はどうしたらよいですか。
Q5.5.11.3 県の退職共済会に加入しています。経理計上の仕方は同額処理同額計上方式をとっていますが、退職給付引当資産>退職給付引当金です。
原因として何が考えられますか。
Q5.5.11.4 県の退職共済会に加入しています。
経理計上の仕方は同額処理同額計上方式をとっていますが、退職給付引当資産<退職給付引当金です。
原因として何が考えられますか?
Q5.5.11.5 県の退職共済会からの残高通知書より退職給付積立資産が多くなっていました。
原因として何が考えられますか。
Q5.5.11.6 県の退職共済会からの残高通知書より退職給付引当金が多くなっていました。原因として何が考えられますか。
Q5.5.11.7 福祉医療機構の退職共済会へ入っていますが職員が退職した時の仕訳を教えてください。
Q5.5.11.8 福祉医療機構の退職共済会へ入っています。
資産計上する必要はありますか?
また、処理科目は?
Q5.5.11.9 職員が退職した時の為に、法人で独自の積立をしています。
退職給付引当金を計上してもいいですか。
Q5.5.11.10 中小企業特退金共済に加入しています。
掛金の支払い時は退職給付引当資産と退職給付引当金にも計上しています。
このたび、監査で間違っていると指摘をうけ、費用で計上していくように指導がありました。これまでの退職関係の資産・負債を修正したいのですが、どうしたらいいでしょうか。
Q5.5.11.11 県の退職共済会に加入しています。共済会への年会費は退職給付引当資産へ含めてもいいですか。
Q5.5.11.12 職員の配置換えがありました。
県共済の掛金を移動する必要がありますか?


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5.5.11.1  県の退職共済会に加入しています。本人負担分は給料から天引きし、預り金として処理をしています。
掛金を支払った時の処理を教えてください。

  【仕訳例】
借 方 貸 方 摘 要
退職給付引当資産 10,000 預金 20,000 掛金支払い
職員預り金 10,000






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5.5.11.2  職員を新たに採用しましたが、この職員は前の職場で当法人が加入している退職共済会に入っており、そのまま引き継いでいます。
当法人での処理はどうしたらよいですか。

  退職給付引当資産と退職給付引当金に計上することになります。

計上金額は、法人の選択した方法で処理します。

【仕訳例】
借 方 貸 方 摘 要
退職給付引当資産 1,000,000 退職給付引当金


なお、同額でない場合は、雑収益または雑損失が、発生します。


[QAS-7570]   Q&A目次   ページTOP ページTOP

5.5.11.3  県の退職共済会に加入しています。経理計上の仕方は同額処理同額計上方式をとっていますが、退職給付引当資産>退職給付引当金です。
原因として何が考えられますか。

  以下のような理由が考えられます。

@掛金分を2重計上している。
A 引当をしていない。


[QAS-7620]   Q&A目次   ページTOP ページTOP

5.5.11.4  県の退職共済会に加入しています。
経理計上の仕方は同額処理同額計上方式をとっていますが、退職給付引当資産<退職給付引当金です。
原因として何が考えられますか?

  以下のような理由が考えられます。

@当年度の掛金分を計上していない。
A退職者がおり、退職処理の際引当の取崩をしていない。


[QAS-7630]   Q&A目次   ページTOP ページTOP

5.5.11.5  県の退職共済会からの残高通知書より退職給付積立資産が多くなっていました。
原因として何が考えられますか。

  以下のような理由が考えられます。

@当年度の退職者・異動の処理がしていない。
A共済会への掛け金を重複して計上してしまった。

こちらもをご覧ください。


[QAS-7640]   Q&A目次   ページTOP ページTOP

5.5.11.6  県の退職共済会からの残高通知書より退職給付引当金が多くなっていました。原因として何が考えられますか。

  以下のような理由が考えられます。

@退職・異動の際、引当金取崩し処理をしていない。
A引当金の繰入が少なく間違っている。


[QAS-7650]   Q&A目次   ページTOP ページTOP

5.5.11.7  福祉医療機構の退職共済会へ入っていますが職員が退職した時の仕訳を教えてください。

  福祉医療機構は掛金支払時に費用計上で処理をしますので、法人経由で職員への支払がなされなければ、処理は不要です。


[QAS-7670]   Q&A目次   ページTOP ページTOP

5.5.11.8  福祉医療機構の退職共済会へ入っています。
資産計上する必要はありますか?
また、処理科目は?

  福祉医療機構の退職共済は、掛け捨て型になりますので、資産計上はしません。

また、引当金の計上も行わず、掛金支払い時は退職給付費用で処理をします。


[QAS-7680]   Q&A目次   ページTOP ページTOP

5.5.11.9  職員が退職した時の為に、法人で独自の積立をしています。
退職給付引当金を計上してもいいですか。

  きちんと制度化されたものであれば問題ありません。

「準備しておこう」という程度の場合、認められません。



[QAS-7690]   Q&A目次   ページTOP ページTOP

5.5.11.10  中小企業特退金共済に加入しています。
掛金の支払い時は退職給付引当資産と退職給付引当金にも計上しています。
このたび、監査で間違っていると指摘をうけ、費用で計上していくように指導がありました。これまでの退職関係の資産・負債を修正したいのですが、どうしたらいいでしょうか。

  福祉医療機構の制度と同様に、中小企業特退金共済の掛金も、資産負債計上はしません。

もし同額で計上しているならば、退職給付引当金と退職給付引当資産を逆仕訳で相殺してください。

金額が異なる場合は、「過年度損益修正益」または「過年度損益修正損」が発生します。


[QAS-50022]   Q&A目次   ページTOP ページTOP

5.5.11.11  県の退職共済会に加入しています。共済会への年会費は退職給付引当資産へ含めてもいいですか。

  年会費については法人の掛金とは違いますので「事務費−諸会費」で処理をします。

「退職給付引当資産」で処理すると、共済会からの通知書と相違が出ますね。


[QAS-50023]   Q&A目次   ページTOP ページTOP

5.5.11.12  職員の配置換えがありました。
県共済の掛金を移動する必要がありますか?

  移動処理する必要がある場合とない場合があります。

県共済の掛金(事業主負担分)の異動処理が必要なのは、事業区分や拠点区分やサービス区分をまたがる場合です。

仕訳例は、
こちらをご覧ください。

異動処理が不要なのは、同じ拠点区分内で、サービス区分も同じ場合です。


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