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社会福祉法人会計基準Q&A(会計実践編)
2.2
財務諸表
2.2.1
旧基準の「計算書類」と新基準の「財務諸表」はどう違いますか?
2.2.2
なぜ「財務諸表」と呼ぶようになったのですか?
会計の世界では、「財務諸表」の言葉が一般的なので統一されました。
ニュアンス的には、外部へ報告するイメージが強くなったような気がします。
2.2.3
新基準の「財務諸表」には、どんなものがありますか?
2.2.4
「資金収支計算書(第1号の1様式)」の構成の変更を教えてください。
3つに分ける点は変わりませんが、名称及び内容が少し変わりました。
旧基準 |
新基準 |
経常活動による収支 |
事業活動による収支 |
施設整備等による収支 |
施設整備等による収支 |
財務活動による収支 |
その他の活動による収支 |
旧基準では、3つの収支区分(経常活動、施設等整備、財務活動)のいずれにも該当しない収支について迷いましたが、新基準では3区分目がその他の活動になってカバーされました。
2.2.5
構成の変更に伴い勘定科目の表示位置の変わったものがあれば教えてください。
「○○による収支」という大きな区分の間での科目の移動のことですね。
主な変更点は、以下のとおりです。
(1)旧基準の「経理区分間繰入金収入・支出」等が、名称の変更とともにその表示位置が変わりました。
旧基準 |
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新基準 |
<経常活動による収支> |
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<事業活動による収支> |
会計単位間繰入金収入・支出 |
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経理区分間繰入金収入・支出 |
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<施設整備等による収支> |
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<施設整備等による収支> |
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<財務活動による収支> |
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<その他の活動による収支> |
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○○区分間繰入金収入・支出 |
旧基準 |
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新基準 |
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<経常活動による収支> |
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<事業活動による収支> |
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<施設整備等による収支> |
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<施設整備等による収支> |
元入金支出 |
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<財務活動による収支> |
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<その他の活動による収支> |
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事業区分間長期貸付金支出 |
(2)「設備資金借入金償還金支出」の表示位置が変わりました。
旧基準 |
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新基準 |
<経常活動による収支> |
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<事業活動による収支> |
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<施設整備等による収支> |
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<施設整備等による収支> |
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設備資金借入金償還金支出 |
<財務活動による収支> |
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<その他の活動による収支> |
設備資金借入金償還金支出 |
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2.2.6
「資金収支計算書」と企業会計の「キャッシュフロー計算書」は概念的には同じと考えてもいいでしょうか?
企業会計で要求されている「キャッシュフロー計算書」とは、資金の範囲が違いますし、必然的に構成も異なりますから同じとは言えません。
しかし、概念的には同じと言えるでしょう。
2.2.6.1
では、資金の範囲は具体的にどう違うのですか?
資金の範囲は、会計ルールごとにそれぞれ考え方が異なり相違があります。
社会福祉法人の「
資金収支計算書(第1号の1様式)」では、支払資金=流動資産−流動負債 です。
(ただし一部除かれる科目もありますので、詳しくは、
こちらをご覧ください。)
なお、旧基準と新基準でその考え方は変わっていません。
このように、社会福祉法人会計の資金の範囲は、非常に広いです。
これに対して、企業会計の「キャッシュフロー計算書」の資金は限定されています。
具体的には、「現金」「当座預金」「普通預金」「3か月以内の定期預金」等になります。
2.2.7
「事業活動収支計算書」から「事業活動計算書」になぜ名称が変わったのですか?
社会福祉法人は、お金の動きすなわち資金収支が最重要なものとして経理処理をしてきました。
旧基準では、一歩進んで資金より広い意味の財産の動きも重要だということから、資金収支に重きを置きながらも事業活動収支(損益)を導入しました。
今回新基準では、さらに事業活動(損益)に軸足を移すとともに、その名称も損益であることを明確にするために収支の表現を取りました。
しかし、考え方はあまり変わらないと思ってもよいです。
ご安心ください。
2.2.8
「事業活動計算書(第2号の1様式)」の構成の変更を教えてください。
4つに分ける点は変わりませんが、名称及び内容が少し変わりました。
旧基準 |
新基準 |
事業活動収支の部 |
サービス活動増減の部 |
事業活動外収支の部 |
サービス活動外増減の部 |
特別収支の部 |
特別増減の部 |
繰越活動収支差額の部 |
繰越活動増減差額の部 |
旧基準では、「収支」という言葉が使われていましたが、新基準では全てから除かれ「増減」に変えられました。
2.2.9
構成の変更に伴い勘定科目の表示位置の変わったものがあれば教えてください。
「○○の部」という大きな区分の間での科目の移動のことですね。
主な変更点は、以下のとおりです。
(1)旧基準の「経理区分間繰入金収入・支出」等が、名称の変更とともにその表示位置が変わりました。
旧基準 |
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新基準 |
<事業活動収支の部> |
|
<サービス活動増減の部> |
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<事業活動外収支の部> |
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<サービス活動外増減の部> |
会計単位間繰入金収入・支出 |
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経理区分間繰入金収入・支出 |
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<特別収支の部> |
|
<特別増減の部> |
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○○区分間繰入金収益・費用 |
<繰越活動収支差額の部> |
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<繰越活動増減差額の部> |
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(2)「国庫補助金等特別積立金取崩額」の表示位置が変わりました。
旧基準 |
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新基準 |
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<事業活動収支の部> |
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<サービス活動増減の部> |
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[【収入】 |
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国庫補助金等特別積立金取崩額 |
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【費用】 |
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国庫補助金等特別積立金取崩額 |
控除項目 |
<事業活動外収支の部> |
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<サービス活動外増減の部> |
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<特別収支の部> |
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<特別増減の部> |
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【収入】 |
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国庫補助金等特別積立金取崩額 |
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【費用】 |
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国庫補助金等特別積立金取崩額 |
控除項目 |
<繰越活動収支差額の部> |
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<繰越活動増減差額の部> |
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こちらもご覧ください。
2.2.10
「事業活動計算書」と企業会計の「損益計算書」は概念的には同じと考えてもいいでしょうか?
企業会計で要求されている損益計算書とは、よく似ており、概念的には同じと言えるでしょう。
2.2.11
「貸借対照表(第3号の1様式)」の考え方に概ね変更はないと考えてもよいでしょうか?
構成に関して、概ね変更はありませんが、勘定科目の使い方が整備され細分化されました。
実務的には、似たような科目が多くあり戸惑うかもしれません。
似たような科目については、
こちらをご覧ください。
2.2.12
「貸借対照表(第3号の1様式)」において、流動と固定の区分の変わった点を教えてください。
ワンイヤー・ルールによる1年以内返済等の固定資産・負債は、流動資産・負債に表示されることになりました。
あまりなじみはないかもしれませんが、経営分析における重要な比率である流動性比率に影響を及ぼします。
流動比率については、
こちらをご覧ください。
2.2.12.1
流動比率とは?
経営分析で使用される財務安全性を判断する重要な指標の一つです。
流動比率=流動資産÷流動負債 で計算されます。
比率は、短期間に支出される流動負債に対し、その支払財源である流動資産が何倍あるかという余裕度を示しています。
概ね120〜150%あれば優良と思われます。
100%以下の場合すなわち流動資産の方が少ない場合は、資金ショートが想定されますから早めの対策が必要です。
2.2.13
「重要性の原則」について教えてください。
会計処理の原則、手続き、財務諸表の表示に関し、厳密であればいいというものではありません。
経済性、明瞭性も必要ですから読む人の役に立つのであれば、重要性の乏しいものについては簡便な方法も認められています。
これを「重要性の原則」と言い、会計処理等の全体に適用される大原則の一つです。
2.2.13.1
重要性が乏しい場合とは、具体的にいくらまでですか?
法人規模、事業内容及びそれぞれの事例内容によって様々ですから、具体的な金額を示すことは残念ながらできません。
財務諸表等を読む人にとって誤りのない判断ができることを目的として、何が重要かそうでないかを総合的に考えて判断することになります。
2.2.13.1.1
そこを何とか具体的金額のガイドラインはないですか?
「そうですね・・・」
資産負債の場合でしたら、
資産総額の0.1%以下
収益費用でしたら、
サービス活動収益の0.1%以下
当期活動増減差額の0.1%以下
上記に当てはまる項目については、金額的な重要性が乏しい場合と法人でルールを決めてもいいかもしれませんね。
ただし、量的(金額的)な重要性だけではなく質的な重要性も考慮すべきですから、最終的には、会計責任者が良識的に判断し決定してください。
2.2.14
作成を省略出来る財務諸表はありませんか?
こちらにありますように財務諸表について数多く様式があります。
しかし、必ず全ての作成が必要というわけではなく、その作成を省略出来る場合があります。
具体例は、下記の<関連事項>をご覧下さい。
2.2.14.1
当法人は社会福祉事業を1施設のみで行っています。
公益事業、収益事業を実施していませんが、資金収支内訳表と事業活動内訳表を作る必要はありますか?
2.2.14.2
1つの障害福祉施設のみを運営しています。
社会福祉事業が大半ですが、公益事業も一部あります。全ての財務諸表や附属明細書を作成する必要はありますか。