第2章 勘定科目は、こう変わった!
(1)細分化された科目
新基準の勘定科目に関する印象は、「もっと細かく!」の一言ですね。
こんなに細かくしなくてもいいのにと思うところもありますが、難しいわけではありませんので、頑張って分けてください。
具体的には、以下のようにたくさんあります。
@従来一つの科目で処理していたものを分けるもの
●未収金・・・・・説明は、 Q4.4.1 旧基準の「未収金」が、新基準では「事業未収金」「未収金」「未収補助金」「未収収益」に分かれましたが、どう使うのでしょうか?をご覧ください。
【旧基準】 | 【新基準】 |
未収金 | 事業未収金 |
未収金 | |
未収補助金 | |
未収収益 |
●前払金・・・・・説明は、 Q4.4.2 旧基準の「前払金」が、新基準では「前払金」「前払費用」に分かれましたが、どう使うのでしょうか?をご覧ください。
【旧基準】 | 【新基準】 |
前払金 | 前払金 |
前払費用 |
●未払金・・・・・説明は、 Q4.4.3 旧基準の「未払金」が、新基準では「事業未払金」「その他の未払金」「未払費用」に分かれましたが、どう使うのでしょうか?をご覧ください。
【旧基準】 | 【新基準】 |
未払金 | 事業未払金 |
その他の未払金 | |
未払費用 |
●前受金・・・・・説明は、 Q4.4.4 旧基準の「前受金」が、新基準では「前受金」「前受収益」に分かれましたが、どう使うのでしょうか?をご覧ください。
【旧基準】 | 【新基準】 |
前受金 | 前受金 |
前受収益 |
●預り金・・・・・説明は、 Q4.4.7 旧基準の「預り金」が、新基準では「預り金」「職員預り金」に分かれましたが、どうして分かれたのでしょうか?をご覧ください。
【旧基準】 | 【新基準】 |
預り金 | 預り金 |
職員預り金 |
●基本財産特定預金・・・・・説明は、 Q4.4.6 旧基準の「基本財産特定預金」が、新基準では「定期預金」「投資有価証券」に分かれましたが、どうして分かれたのでしょうか?をご覧ください。
【旧基準】 | 【新基準】 |
基本財産特定預金 | 定期預金 |
投資有価証券 |
●その他の支出(費用)
【旧基準】 | 【新基準】 |
事業費支出・保険衛生費 | 事業費(支出)・医薬品費(支出) |
事業費(支出)・診療・療養等材料費(支出) | |
事業費(支出)・保険衛生費(支出) |
【旧基準】 | 【新基準】 |
事務費支出・賃借料 | 事務費(支出)・賃借料(支出) |
事務費(支出)・土地・建物賃借料(支出) |
A内部取引を分けるもの
●短期貸付金・・・・・説明は、 Q4.4.5 旧基準の「短期貸付金」が、新基準では「短期貸付金」「事業区分間貸付金」「拠点区分間貸付金」等に分かれましたが、どうして分かれたのでしょうか?をご覧ください。
【旧基準】 | 【新基準】 |
短期貸付金 | 短期貸付金 |
事業区分間貸付金 | |
拠点区分間貸付金 | |
サービス区分間貸付金 |
●長期貸付金
【旧基準】 | 【新基準】 |
長期貸付金 | 長期貸付金 |
事業区分間長期貸付金 | |
拠点区分間長期貸付金 | |
サービス区分間長期貸付金 |
●短期運営資金借入金
【旧基準】 | 【新基準】 |
短期運営資金借入金 | 短期運営資金借入金 |
役員等短期借入金 | |
事業区分間借入金 | |
拠点区分間借入金 | |
サービス区分間借入金 |
●設備資金借入金及び長期運営資金借入金・・・・・説明は、 Q4.4.9 「設備資金借入金」や「長期運営資金借入金」も分けるようですが?をご覧ください。
【旧基準】 | 【新基準】 |
設備資金借入金 | 設備資金借入金 |
長期運営資金借入金 | |
役員等長期借入金 | |
長期運営資金借入金 | 事業区分間長期借入金 |
拠点区分間長期借入金 | |
サービス区分間長期借入金 |
●経理区分間繰入金収入及び支出
【旧基準】 | 【新基準】 |
経理区分間繰入金収入・支出 | 事業区分間繰入金収入(収益)・支出(費用) |
拠点区分間繰入金収入(収益)・支出(費用) | |
サービス区分間繰入金収入(収益)・支出(費用) |
内部取引を相殺消去するために、相手先ごとに明確にすることになりました。
内部取引については、「第5章 そのほか変わった点」(3)をご覧ください。
なお、ここでも「収入」「収益」と「支出」「費用」を分けていますね。
(2)統合された科目
2つが1つに統合されたものがあります。
@支出(費用)関係
【旧基準】 | 【新基準】 |
事業費支出・消耗品費 | 事業費(支出)・消耗器具備品費(支出) |
事業費支出・器具什器費 |
【旧基準】 | 【新基準】 |
事務費支出・消耗品費 | 事務費(支出)・事務消耗品費(支出) |
事務費支出・器具什器費 |
曖昧だったのでまとめることにしました。
(3)名前の変わった科目
使い方はほとんど変わりませんが、名称が変わったものがあります。
@退職給付関係
【旧基準】 | 【新基準】 |
固定資産:退職共済預け金 | 固定資産:退職給付引当資産 |
固定負債:退職給与引当金 | 固定負債:退職給付引当金 |
A積立金関係
【旧基準】 | 【新基準】 | 摘要 |
固定資産:○○積立預金 | 固定資産:○○積立資産 | |
純資産:○○積立金 | 純資産:○○積立金 | これは変わりません |
積立の資産は、定期預金だけではなく有価証券も所有する場合がありますので、積立資産と幅広くしました。
Bその他
こんな変更もあります。
【旧基準】 | 【新基準】 |
借入金利息支出 | 支払利息(支出) |
会計で一般的に使われる表現に変えたということです。
(4)削除された科目
@基本金について、第1号から第4号の区分がなくなりました。
まず、第4号基本金は廃止されましたので、存在自体なくなってしまいました。「旧基準」で持っている法人は、移行時に取崩して次期繰越活動増減差額に含むことになります。
第1号から第3号については、財務諸表の表示上はなくなりました。しかし、基本金明細書の作成が求められていることから、その分類は依然として必要です。よって、科目上はそのまま残っていると思ってください。
詳しくは、 Q4.1.6.1 基本金についてをご覧ください。
A修繕引当金等の引当金がなくなりました。
「新基準」において引当金は、「徴収不能引当金」「賞与引当金」「退職給付引当金」の3つに限定されました。
それ以外の引当金がある場合は、移行時に取り崩して次期繰越活動増減差額に含むことになります。
法人にとって必要であれば、○○積立金でキープすることになります。この場合、必ず裏付けとなる資産(○○積立資産)が必要になりますから注意してください。
詳しくは、
Q4.1.7.1 引当金が3つに限定されたのはなぜですか?
Q4.1.7.9 修繕引当金の計上は、認められませんか?
をご覧ください。
B引当金戻入がなくなりました。
繰り返しますが、「新基準」において引当金は、「徴収不能引当金」「賞与引当金」「退職給付引当金」の3つに限定されました。
そして、それらの処理は、洗替法ではなく、原則差額法が採用されています。よって、繰入だけあればよくて戻入は不要となったということで科目をなくしてしまったと思いますが、実務上はそうは単純にはいきません。
どうしましょう。
まあここは柔軟に考えて、戻入は繰入のマイナス(=貸方)として処理すればいいでしょう。
関連するものとして、
Q4.1.7.2 引当金の処理は、洗替法と差額法のいずれを採用すればいいでしょうか?
Q4.1.7.7 賞与引当金戻入の科目がありませんが、どう処理すべきでしょうか?
をご覧ください。
(5)新しい科目
増えたり減ったり変わったりと、忙しいですね。
最後に、新しい科目を説明します。
@そのほとんどは、新会計手法の適用によるものです。
ここでは、「こんな科目が増えたんだ」程度で結構です。
実際それらの科目を使わなければならないケースは、ほんの一握りですから安心してください。
新しい会計手法 | 新しい勘定科目 | 摘要 |
1年基準 | 1年以内回収予定長期貸付金 | 左は一例です。 |
1年以内返済予定設備資金借入金 | ||
金融商品の時価会計 | 有価証券評価益・損 | |
投資有価証券評価益・損 | ||
リース会計 | リース資産 | |
リース債務 | ||
退職給付会計 | 退職給付積立資産・退職給付引当金 | |
退職給付支出(費用) | ||
減損会計 | 資産評価損 | |
税効果会計 | 繰延税金資産・繰延税金負債 | |
法人税等調整額 |
Aその他の主な新しい科目
事業活動計算書において、少し変わった科目が増えました。
あまり使わないとは思いますが、名前だけでも覚えておいてください。
勘定科目 | 摘要 | |
事業活動計算書 | 為替差益・差損 | Q4.2.3.4.5 為替差損益は、どんな場合に発生しますか?を参照 |
固定資産受贈額 | Q4.2.2.3.9 物品の寄付を受けた場合に、仕訳は必要ですか?を参照 | |
災害損失 | Q4.2.3.4.7 「災害損失」はどんな場合に使うのですか?を参照 |
(6)まとめ
(1)から(5)にかなりの科目をあげました。他にも変わった点はありますが、ポイントは概ね押えていると思います。
その他の点は、実務の中で、徐々に覚えていけばよいでしょう。
ただ、皆さんが見て「なんだこれ?」っていう科目は、あまり使う機会はありませんからそんなに心配しなくても結構です。
「やってみたら、結局あまり変わらない」と感じると思います。