【第2回】 これを機会に、償却資産について学ぼう!



第1章 償却資産の計上

資産の中には、短期間(1年以内)に増えたり減ったり変化するものと、変化しないで長期間(1年超)維持されるものがあります。

前者は「流動資産」と言われ、現金、普通預金、未収金、短期貸付金、商品などがあります。

それに対し、後者は「固定資産」と言われ、土地、建物、車輌運搬具、器具備品、権利、長期の有価証券、長期の預金などがあります。

この「固定資産」のうち、使ったり、時間がたったりすると確実に価値が下がっていくものがあります。この価値が下がっていくようなものを「償却資産」と言います。

価値が下がっていくことの処理を「減価償却」と呼びますので、このような「固定資産」「償却資産」としたわけです。

具体的には、建物、車輌運搬具、器具備品などがあげられます。

(1)取得した時の処理

「償却資産」を取得するのにかかった費用を取得価額とします。

取得価額には、購入価額だけではなく直接的な付随費用も含めます。

直接的な付随費用とは、その償却資産が使用できるようになるまでの以下のような費用をいいます。

固定資産の取得価額に含める費用
・運搬費(引取運賃、荷役費、運送保険料)
・設置費用
・購入手数料
・関税 など


また、建物を例にするとさらに多くあります。

詳しくは、 Q4.5.7.2 建物を建設する時には、様々な支出が発生します。全て「建物」とすべきではないと思いますが、一般的なガイドラインはありますか?をご覧ください。

取得したことによって生じる不動産取得税、自動車取得税等は、租税公課で処理し、取得価額には含めません。

なお、あまり小さい金額のものまで期間に分ける(減価償却する)必要はないだろうということで、「償却資産」は取得価額が10万円以上のものとされています。

それ未満は、支出時に「○○費」で処理してOKです。


取得に関しては、様々な疑問点があると思います。

・1個か1式か10万円はどう判断するの?
・寄附してもらった場合の処理は必要?
・時価はどうやって決めるの?
・一部補助金で購入した場合はどうするの?
・修繕費か償却資産かどっち?



別途数多くのQ&Aが用意してあります。こちら Q4.5.1 取得についてをご覧ください。

(2)減価償却の考え方及び計算方法

@考え方

新基準になっても基本的な考え方は変わりません。


「減価償却」とは、「償却資産」の取得価額を、見積もった一定の使用期間(「耐用年数」といいます)に「費用」として配分することを言います。

「費用」ですから、事業活動計算書のみで、資金収支計算書には出てきません。

この理由については、  【第1回】 決算書のこんな点が変わった! 「第1章 「収支」と「損益」を理解しよう!」 をお読みください。

イメージは、以下のとおりです。

償却資産


      取得価額=1,000





      5年
1年目 : 減価償却費=200(500)
2年目 : 減価償却費=200(250)
3年目 : 減価償却費=200(125)
4年目 : 減価償却費=200(63)
5年目 : 減価償却費=200(62)


A計算方法

「旧基準」では、原則「定額法」で計算しましたが、「新基準」では、「定額法」に加え「定率法」も認められました。


「定額法」の減価償却費は、取得価額を耐用年数に均等に配分します。

図示すると以下のとおりです。

取得価額

      1,000
200 ←減価償却費
800 200
600 200
400 200
200 200
取得時 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目


「定率法」は、前年度の帳簿価額に一定率を乗じて減価償却費を計算します。 最初は多くだんだん少なくなっていきます。

図示すると以下のとおりです。

取得価額

      1,000
500 ←減価償却費
500 250
250 125
125 63
62 62
取得時 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目

こちら Q4.5.3.1 減価償却方法の定率法の考え方を教えてください。もご覧ください。


もちろんいずれの方法も、取得価額=減価償却費の総額ですから、期間の割振り額が異なるだけのことです。

社会福祉法人の場合、毎年度均等額にする方が規則的で分かりやすいでしょうから「定額法」を推奨します。


こちら Q4.5.3.2 減価償却方法の定率法と定額法ではどちらを採用すべきですか?もご覧ください。



減価償却費について詳しくは、 Q4.5.3 減価償却についてをご覧ください。

B耐用年数

新基準になっても変わりません。

配分する期間は、年単位とし、何年何カ月とすることはありません。

理論的には、法人が妥当と判断した年数で良いのですが、通常は税法に定められた年数に従います。


詳しくは、 Q4.5.4 耐用年数についてをご覧ください。

(3)貸借対照表の表示方法

新基準になっても変わりません。

償却資産の価値は減価償却によって毎年度価値が下がっていきますが、下がった後の価値を帳簿価額と言います。

取得価額は一定で、帳簿価額は毎年度減少して行きます。

これを財務諸表の貸借対照表に表示する方法には、間接法と直接法の2種類あります。

[間接法] 取得価額と減価償却累計額によって帳簿価額を示す方法です。

 【貸借対照表】
 車輌運搬具 1,000
 減価償却累計額 △400 600


[直接法] 減価償却後の帳簿価額で示す方法です。

 【貸借対照表】 
 車輌運搬具  600

取得価額の情報として、脚注に、減価償却累計額の記載が必要です。

(4)その他

@リース資産も対象に

新基準で新しく採用されたリース会計により計上されたリース資産も減価償却の対象になります。



A償却の開始

償却の開始は、取得時から計算してもらって結構です。

使い始めてから価値が下がると厳密に考えれば、取得と使用開始のタイムラグが問題になります。

しかし、「減価償却」は大まかに期間に配分するものですから、そのズレを特に考える必要はありません。